角膜内皮細胞が1000個/mm² 以下になると、角膜がむくんで視界がぼやけることがあります。
これが「水疱性角膜症」です。
角膜内皮細胞は、加齢とともに毎年約 0.6% ずつ減少します¹⁾。
ただし、加齢だけが原因で水疱性角膜症になることはありません。
白内障手術では、超音波を使用します。
超音波によって角膜内皮細胞が傷つくことがあります。
「フックス角膜内皮ジストロフィ」は、角膜内皮細胞が減少する病気です。
日本人の0.1% がフックス角膜内皮ジストロフィです。1,2)
フックス角膜内皮ジストロフィは、自覚症状がほとんどありませんが、
進行すると水疱性角膜症を発症することがあります。
引用
1) https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/17282
2) https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/h26-1-072.pdf
「落屑症候群」とは、目の中のレンズ「水晶体」に白いふけのようなものがたまる病気です。
角膜内皮細胞が減ったり、緑内障を発症することがあります。
コンタクトレンズを装着したまま眠ると、角膜の酸素が不足し、角膜内皮細胞が減少する可能性があります。
急性緑内障発作を予防するため、レーザーで虹彩に小さな穴を開ける治療を行うことがあります。
この治療によって、まれに水疱性角膜症を発症することがあります。
サイトメガロウイルスなどの一部のウイルスは、角膜内皮細胞に炎症を引き起こすことがあります。
水疱性角膜症は自然に治ることはなく、目薬による治療効果も限定的です。
放置すると角膜が混濁し、視界が悪化します。
混濁が進行すると、手術後も視力の回復が困難になることがあります。
そのため、早期に角膜移植の専門医に相談することが重要です。
重症化すると失明に至る可能性もあります。
角膜全層を移植する全層角膜移植 (PKP) と比較して、視力の改善が期待できるほか、拒絶反応や感染症のリスクが低いといったメリットがあります。
角膜移植についてはこちら
DSAEK (Descemet Stripping Automated Endothelial Keratoplasty) は、
角膜内皮細胞、デスメ膜、角膜実質の一部を移植する手術です。
移植片には、ヒトのドナー角膜を使用します。
手術後は仰向けで安静にする必要があります。 (移植片をガスで固定するため)
移植片に余分な角膜実質が含まれるため、手術後の視力はDMEKよりも劣る傾向があります。
DSAEKは余分な角膜実質も移植されるため、手術後の視力はDMEKよりもやや劣る傾向があります。
DMEKは角膜内皮細胞とデスメ膜のみを移植する手術です。
DSAEKとは異なり、余分な角膜実質を含みません。
DMEKでは余分な角膜実質は移植されません
DSAEKと同様、手術後は仰向けで安静にする必要があります。
(ガスを上方の角膜に接着させるため)
DMEKの移植片は薄く脆弱なため、手術には高度な技術が求められます。
DMEKは海外では広く普及していますが、日本では実施できる術者が少ないのが現状です。
DMEKはDSAEKよりも高度な技術が求められる手術です。
術後の視力をより良好に維持するため、手術手技の改良が進められています。
ここでは、当院の医師が開発した2つの手技をご紹介いたします。
DMEKの移植片は非常に薄いため、眼内に挿入すると「筒状」に丸まってしまいます。
ダブルバブルテクニックは、この丸まった移植片を効率よく広げるための方法です。1,2)
挿入された移植片は、筒状に丸まってしまいます。
空気の力で、丸まった移植片を広げます。
空気の力で移植片を密着させます。
移植片の上にあった空気は、移植片の下へと移動します。
上にあった空気は押し出されて
下の空気と合流します
引用
1) Double-Bubble Technique in Descemet Membrane Endothelial
Keratoplasty for Vitrectomized Eyes: A Case Series
Hayashi et al. Cornea. 2018 Sep;37(9):1185-1188.
2) Double-Bubble Technique Assisted by Holding Forceps: A Modified
Technique in Descemet Membrane Endothelial Keratoplasty for
Vitrectomized Eyes With Scleral Fixated Intraocular Lens
Igarashi and Hayashi et al.

眼科医
林 孝彦 Takahiko Hayashi
はやし たかひこ
日本大学眼科Nihon University
診療教授
角膜移植学会
理事
きくな湯田眼科
角膜外来主任医師
移植片を角膜の中央よりもやや上方に固定すると、角膜内皮細胞の生存率が向上します。1)
上方固定でないもの
1285個/mm²
1.34倍
上方に固定したもの
1725個/mm²

院長
湯田 健太郎 Kentaro Yuda
ゆだ けんたろう
きくな湯田眼科
院長
センター北しみずアイクリニック
理事
妙蓮寺眼科
非常勤
移植された角膜内皮細胞は、1年で約40% 脱落します。
1年を過ぎると、脱落の速度は緩やかになります。
手術後5年以内に、約9% の患者が再移植を受けたと報告されています。1)

眼科医
林 孝彦 Takahiko Hayashi
はやし たかひこ
日本大学眼科Nihon University
診療教授
角膜移植学会
理事
きくな湯田眼科
角膜外来主任医師
林孝彦医師は角膜移植のスペシャリストであり、角膜内皮移植術DMEKやケアーズを得意としています。
優れた研究者のみが受けることができるフルブライト奨学金を取得後、ドイツ ケルン大学に留学して最先端の角膜治療を学びました。帰国後は日本角膜移植学会の理事に就任、日本での角膜移植の普及に尽力しています。
角膜移植の年間症例数は140件、通算1000例以上。

眼科医
清水 俊輝 Toshiki Shimizu
しみず としき
センター北しみずアイクリニック
院長
きくな湯田眼科
非常勤医師
日本大学
兼任講師
清水俊輝医師は角膜移植・白内障手術・小児近視治療を専門にしています。
これまで横浜市立大学と日本大学で角膜外来を10年以上にわたり支えてきました。
研究分野においては、世界で初めて角膜移植におけるエクソソームの役割を明らかにし、国内外から高い評価を得ています。