単焦点眼内レンズ
非常にクリアな見え方が得られる
ハロー (光のにじみ) やグレア (まぶしさ) が少ない
ピントが合う距離は1か所のみ
多くの場合、メガネが必要になる
多焦点眼内レンズ
メガネを使わずに遠くから近くまで見えることが多い
単焦点眼内レンズと比べて、見え方のクリアさがやや劣る (コントラスト感度の低下)
ハローやグレアが見えることがある
多焦点眼内レンズは、遠くも近くも見えるように作られた特別なレンズです。
ですが、「くっきり・はっきり見える力 (コントラスト感度) 」は、普通の単焦点レンズより少し劣ることがあります。
そのため、見え方が少しかすんで感じることがあります。
このことを知らずに手術を受けると、思っていたほどよく見えず、「失敗したかも…」と感じる人もいます。
また、多焦点眼内レンズは、緑内障 (りょくないしょう) や糖尿病による目の病気 (糖尿病網膜症) がある方には向いていません。
目にそういった病気がない人であれば、多くの場合は問題ありませんが、それでも中には「遠くも近くもぼやけて見える」と感じる人がいます。
実際に、100人に1人の割合で、多焦点レンズから単焦点レンズに入れ替える手術をしているという報告もあります。
値段が高くて海外製の多焦点レンズが、
必ずしも「いちばん良いレンズ」というわけではありません。
本当に良いレンズとは、
「その人の目の状態」や「普段の生活」
に合っているレンズのことです。
人によっては、単焦点レンズの方が合っている場合もあります。
白内障の手術はとても良い治療ですが、メリットだけでなくデメリットもあることを知っておいてください。
手術を受ける前に、どのレンズが自分に合っているか、しっかり理解してから選ぶことが大切です。
白内障手術を受ける前には、いくつかの大切な検査が行われます。
その中でも、以下の4つはとくに重要な検査といわれています。
手術後にピントが合うように、目に入れるレンズの度数を決めます。
レンズのにごり具合や、手術がやりやすいかどうかを調べます。
緑内障や黄斑の病気など、見え方に影響する病気がないかを確認します。
「見え方の質」に関わる目のゆがみの一種です。
①~③までは、今ではほとんどの眼科で行われている検査です。
しかし、④の「高次収差」については、特殊な検査機器が必要となるため、必ずしも行われているわけではありません。
収差 (しゅうさ) とは、目の中の光のゆがみのことです。
この収差には、「低次収差」と「高次収差」の2つがあります。
近視・遠視・乱視など。メガネやコンタクトで矯正できます。
メガネでは直せない、目のゆがみ。見え方の“質”に影響します。
高次収差が強い人が多焦点眼内レンズを入れると、「ワクシービジョン (Waxy Vision) 」という、ぼやけた見え方になることがあります。
遠くも近くも、はっきりしない、かすんだ感じになるのです。
そのため、高次収差が強い方は、見え方がクリアな「単焦点レンズ」の方が向いている場合があります。
高次収差の検査は基本的に不要です。
高次収差の検査を行うことで、見えにくくなる可能性をある程度予測できます。
高次収差は、ふつうの眼科検査機器では測れません。
「ウェーブフロントアナライザー」や「前眼部OCT」という特別な機器が必要です。
そのため、すべてのクリニックで検査されているわけではありません。
多焦点レンズをご希望の場合は、高次収差の検査ができるかどうかを事前に確認することをおすすめします。
白内障手術では、患者さんの目に合った眼内レンズを入れるために、手術前に詳しい検査を行い、レンズの度数 (ピントの位置) を決めています。
ですが、ごくわずかなズレが起きたり、手術前に決めたピントが思ったような見え方と違って感じることもあります。
以下のような場合、予定通りにいかないことがあります。
また、多焦点眼内レンズを使った方のうち、100人に1人の割合で交換が必要になるという報告もあります。
万が一、眼内レンズの度数が合わなかったり、
見え方に強い違和感があった場合は、眼内レンズを取り出して、新しいものに交換する手術を行うことがあります。
この交換手術は、通常の白内障手術よりも高い技術が必要です。
そのため、「交換手術にも対応できる」ということは、その医療機関に確かな手術技術があるという一つの目安になります。
白内障手術のごく一部では、目の奥 (硝子体) に問題が起きて、「硝子体手術」が必要になることがあります。
この場合、硝子体手術にも対応している施設であれば、
一度の手術で完了する可能性が高くなります。
一方、硝子体手術ができない施設では、術後に別の病院で追加の手術を受ける必要が出てくる場合もあります。
硝子体手術は白内障手術よりも難易度が高いため、この手術まで対応している施設は、高度な技術があると期待できます。
ただし、硝子体手術が必要になるのはごくまれです。
また、硝子体手術を行っていなくても、白内障手術において豊富な経験と高い技術を持つ医師も多くいます。
そのため、「硝子体手術に対応しているかどうか」は、あくまで参考情報のひとつとして捉えていただくのがよいでしょう。
医療機関選びでは、対応できる検査や相談のしやすさなど、総合的な観点で検討することをおすすめします。
白内障手術を受けるにあたって、「担当の先生の技術は大丈夫かな?」と心配になる方も多いと思います。
ただ、医師の技術を事前に正確に知るのは、なかなか難しいものです。ここでは、医師選びの参考になるいくつかのヒントをご紹介します。
大学病院や総合病院には、たくさんの眼科医が勤務しています。
そのため、初診でどの医師が担当になるかは選べないことがほとんどです。
特定の医師に診てもらいたいときは、紹介状が有効です。
まずは地域の眼科クリニックで相談し、希望する病院・医師名を記載した紹介状を書いてもらうとよいでしょう。
クリニックでは、基本的に院長や所属医師が手術を行うことが多く、「誰が手術するのか」が分かりやすいというメリットがあります。
また、以下のようなポイントは、医師の手術技術を判断する「目安」のひとつになります。
クリニックによっては、手術前の相談・手術の執刀・術後の診察を別々の医師が担当する場合があります。
このような体制でも適切に連携が取れていれば問題ないのですが、担当医が変わることで、説明の内容や方針に違いが生じることもあるため、ご自身が納得して手術を受けるためにも、「どの医師がどの段階を担当するのか」を事前に確認しておくことが大切です。
特に、手術の相談をした医師が執刀医かどうかは重要なポイントです。
気になる場合は遠慮なく、執刀医の名前を確認するようにしましょう。
多焦点眼内レンズを使った白内障手術では、ごくまれに (100人に1人程度) レンズが合わずに、単焦点レンズへ交換が必要になるケースがあります。
その場合、通常は多焦点レンズの追加費用がかかってしまい、返金されないのが一般的です。
しかし、一部のクリニックでは、こうした万が一の際にレンズ費用を返金してくれる制度を設けているところがあります。
このような制度があるクリニックは、ホームページなどに明記されていることが多いため、確認してみるとよいでしょう。
もちろん、返金制度があるかどうかだけでクリニックを選ぶ必要はありませんが、
万が一のときの安心材料として確認しておく価値は十分にある項目です。
レーザー白内障手術とは、「フェムトセカンドレーザー」と呼ばれる精密なレーザーを使って、角膜や水晶体の切開を行う方法です。
従来の白内障手術と比べて、より機械的に精密な操作が可能とされています。
ただし、このレーザー手術が本当に優れているかどうかについては、現在も意見が分かれています。
海外の大規模研究では…
2022年に、2万4806眼を対象とした37の研究データをまとめた報告があります。1)
この報告では、レーザー白内障手術の利点とデメリットを挙げています。
などの合併症も報告されています。
最も大切な手術後の見え方については、従来の手術との明確な差は見られなかったと結論づけられています。
多焦点眼内レンズを使用した場合でも、レーザー手術と従来法の間に視力の差はほとんどないとする報告があります。2 , 3)
さらに、2020年に世界的な医学誌「Lancet (ランセット) 」が発表した研究でも、「費用は高くなるが、従来法と比べて視力改善効果に差はない」と評価されています。4)
この報告は国内メディアでも紹介されています。
もちろん、水晶体嚢 (レンズの袋) の切開がより正確になるなどの点で、一定のメリットがあるという報告もあります。
レーザー白内障手術は、標準治療の“置き換え”ではなく、希望や予算に応じて選べる「オプションの一つ」として考えるのがよいでしょう。
手術の質はレーザーの有無以上に、「誰が手術を行うか」や「アフターケアの丁寧さ」が大きく影響します。
過度な期待をせず、必要に応じて担当医とよく相談して決めましょう。
引用
1) Safety of femtosecond laser-assisted cataract surgery versus conventional phacoemulsification for cataract: A meta-analysis and systematic review
Xu et al. Adv Ophthalmol Pract Res. 2022 May-Jun; 2(1): 100027.
2) Comparison of short-term clinical outcomes of a diffractive trifocal intraocular lens with phacoemulsification and femtosecond laser assisted cataract surgery
Qu et al. BMC Ophthalmol. 2024. Apr 24;24(1):189.
3) Comparison of clinical outcomes between femtosecond laser-assisted versus conventional phacoemulsification
Ang et al. Eye Vis (Lond). 2018 Apr 23:5:8.
4) Femtosecond laser-assisted versus phacoemulsification cataract surgery (FEMCAT): a multicentre participant-masked randomised superiority and cost-effectiveness trial
Schweitzer et al. Lancet. 2020 Jan 18;395(10219):212-224.

きくな湯田眼科
院長
センター北しみずアイクリニック
理事
妙蓮寺眼科
非常勤