
滲出型加齢黄斑変性などでは、現在「抗VEGF薬」を眼の中に注射する治療が広く行われています。
抗VEGF治療は非常に重要な治療ですが、効果を維持するために、数週間〜数か月ごとに注射を繰り返す必要があることがあります。
そこで現在研究されているのが、ウイルスを利用した抗VEGF遺伝子治療です。
ウイルスを「薬の運び屋」として利用する
この治療では、病気を起こさないように加工した「AAV(アデノ随伴ウイルス)」というウイルスを利用します。
AAVの中に、抗VEGF薬を作るための遺伝情報を入れて眼の中へ届けます。
すると、眼の細胞自身が抗VEGF作用を持つタンパク質を作るようになります。
つまり、
抗VEGF薬を何度も注射するのではなく、眼の中で抗VEGF薬を作り続けてもらう
という新しい考え方の治療です。
どのようなメリットが期待されている?
最大の目的は、抗VEGF注射の回数を減らすことです。
現在の治療では、病気の状態によって長期間にわたり注射を続ける必要があります。
遺伝子治療が実用化されれば、1回の治療によって長期間VEGFを抑え、追加注射を大幅に減らせる可能性があります。
どのような治療が開発されている?
現在は、眼の中で
- ・aflibercept(アイリーアと同じ作用を持つ物質)
- ・抗VEGF抗体
- ・VEGFを抑える複数の作用を組み合わせた治療
などを作らせる遺伝子治療の開発が進んでいます。
硝子体内注射だけで投与できる治療や、網膜の下に薬剤を投与する治療など、いくつかの方法が研究されています。
課題もあります
一方で、遺伝子治療にはまだ解決すべき課題があります。
AAVに対する眼内炎症が起こる可能性や、長期間VEGFを抑え続けることによる影響などについて、さらに長期的な検証が必要です。
また、一度遺伝子を導入すると、通常の注射のように簡単に治療を中止できないという特徴もあります。
将来、抗VEGF注射が不要になる可能性も
現在の抗VEGF治療は、
注射 → 効果が低下 → 再注射
を繰り返す治療です。
将来的には、
1回の遺伝子治療 → 眼内で抗VEGF薬を長期間産生
という治療へ変わる可能性があります。
まだ一般診療で行われる標準治療ではありませんが、加齢黄斑変性などの治療負担を大きく変える可能性がある、注目されている次世代治療のひとつです。
