
これまで強い近視がある方では、白内障手術の際に必要となる眼内レンズの度数が、国内承認の多焦点眼内レンズの製作範囲に入らず、多焦点眼内レンズを希望しても選択できないことがありました。
そのような方にとって、新たな選択肢となるのが、3焦点眼内レンズの「アクリバトリノバPro」です。
アクリバトリノバProは、眼内レンズの度数が0.0Dから+27.0Dまで用意されているため、眼軸長が長く、従来の国内承認多焦点眼内レンズでは対応が難しかった強度近視の方にも、使用を検討できるようになりました。
強い近視では、なぜ多焦点眼内レンズを選べなかったのか

白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、その代わりとなる眼内レンズを挿入します。
使用する眼内レンズの度数は、近視の強さだけではなく、主に次のような検査結果から計算します。
- 眼球の前後方向の長さである「眼軸長」
- 角膜のカーブ
- 前房深度
- 手術後に希望する見え方
強度近視の方は眼軸長が長い傾向があり、必要となる眼内レンズの度数が非常に低くなることがあります。
しかし、従来の国内承認多焦点眼内レンズでは、低い度数のラインアップが限られていました。そのため、計算された度数が製作範囲に入らず、単焦点眼内レンズを選ばざるを得ないケースがありました。
アクリバトリノバProは0.0Dからの度数設定があるため、これまで多焦点眼内レンズの適応が難しかった強度近視の方にも、選択肢が広がる可能性があります。
アクリバトリノバProは遠方・中間・近方に対応する3焦点眼内レンズ

アクリバトリノバProは、白内障手術で使用する回折型3焦点眼内レンズです。
手術後に、次の3つの距離へ焦点が合うよう設計されています。
遠方
運転、テレビ、景色を見るときなどの距離です。
中間
パソコンの画面、料理、室内での作業など、約80cm前後の距離です。
近方
スマートフォンや読書など、約40cm前後の距離です。
アクリバトリノバProの加入度数は、眼内レンズ面で中間+1.70D、近方+3.35Dとなっています。
単焦点眼内レンズと比較して、日常生活における眼鏡の使用頻度を減らせる可能性があります。
アクリバトリノバProの主な特徴

1.強度近視の方にも使用を検討できる
球面度数の範囲が0.0D~+27.0Dと広く設定されています。
特に、眼軸長が長く、低い眼内レンズ度数が必要となる方にとって、多焦点眼内レンズを検討できる可能性が広がりました。
2.遠方・中間・近方の3つの距離に対応
運転やテレビだけでなく、パソコンやスマートフォンなど、現代の生活で使用する複数の距離をカバーするよう設計されています。
3.国内承認を取得している
国内で承認された多焦点眼内レンズとして使用できます。
4.乱視用レンズも用意されている
角膜乱視を補正するアクリバトリノバProトーリックも用意されています。ただし、対応できる乱視度数には範囲があり、検査結果によって適応を判断します。
5.紫外線・青色光吸収剤を含む素材
紫外線・青色光吸収剤を含有した親水性アクリル素材が採用されています。光学部径は6.0mm、全長は11.0mmのプレート型レンズです。
国内で承認された多焦点眼内レンズです

アクリバトリノバProは、ドイツに本社を置くVSY Biotechnology社が開発・製造する眼内レンズです。
わかもと製薬株式会社が2024年に国内で製造販売承認を取得しており、医療機器承認番号は30600BZX00189000です。
以前使用されていた前身モデル「Acriva Trinova」は国内未承認レンズであり、医療機関が個別に輸入して使用していました。アクリバトリノバProは、その正弦波回折構造を継承しながら、日本市場向けに開発された国内承認レンズです。
アクリバトリノバProのデメリット
近方の見え方はやや弱い傾向があります

アクリバトリノバProは、遠方・中間・近方に対応する3焦点眼内レンズですが、ほかの3焦点眼内レンズと比較すると、近方の見え方はやや弱い傾向があります。
スマートフォンや細かい文字を見る際には、少し距離を離したほうが見やすい場合や、読書用眼鏡が必要になる場合があります。一方で、遠方から中間距離までの見え方を重視する方には、適した選択肢となる可能性があります。
強い近視で多焦点眼内レンズを諦めていた方へ

「近視が強いため、多焦点眼内レンズは使用できないと言われた」
「白内障手術後は、できるだけ眼鏡を減らしたい」
「遠くだけでなく、パソコンやスマートフォンも見やすくしたい」
このような方は、アクリバトリノバProを使用できる可能性があります。
きくな湯田眼科では、眼軸長、角膜形状、乱視、黄斑部の状態などを詳しく検査したうえで、単焦点眼内レンズを含む複数の選択肢から、一人ひとりに適したレンズをご提案します。
強い近視があることだけで、多焦点眼内レンズを最初から諦める必要はありません。まずは現在の目の状態と、必要となる眼内レンズの度数を確認することが大切です。
