白内障手術はここまで進歩しています
2026年の最新研究から見る眼内レンズの選び方

白内障手術は、濁った水晶体を取り除き、代わりに眼内レンズを入れる手術です。
以前は「白内障を取り除いて視力を改善すること」が手術の大きな目的でしたが、現在ではそれだけではありません。
手術後にどの距離まで裸眼で見たいのか、メガネをどの程度減らしたいのか、夜間の見え方をどの程度重視するのかなど、患者さん一人ひとりの生活に合わせて眼内レンズを選択する時代になっています。
今回は、2025〜2026年にPubMedへ掲載された研究を中心に、白内障手術の最新動向をご紹介します。
眼内レンズは「単焦点」だけではありません
白内障手術では、濁った水晶体の代わりに人工の眼内レンズを挿入します。従来から広く使用されているのが単焦点眼内レンズです。
単焦点眼内レンズは、遠方や中間、近方など、基本的に一つの距離にピントを合わせるレンズです。
一方、近年では、強化型単焦点眼内レンズ、EDOF(焦点深度拡張型)眼内レンズ、多焦点眼内レンズ、3焦点眼内レンズなど、さまざまなタイプが使用されるようになっています。
最近の研究でも、単に「多焦点か単焦点か」という分類だけではなく、どの程度の距離まで見えるのか、コントラストや夜間視機能をどの程度維持できるのかという、より細かな比較が行われています。
注目されている「EDOF眼内レンズ」とは?

現在、白内障手術の分野で研究が活発に行われているものの一つが、EDOF(Extended Depth of Focus:焦点深度拡張型)眼内レンズです。
EDOF眼内レンズは、一つの場所だけにピントを合わせるのではなく、ピントの合う範囲を前後に広げることを目的として設計されています。特に、遠方から中間距離までの連続した見え方を重視する設計が多いことが特徴です。
2026年に発表された研究では、複数種類のEDOF眼内レンズと単焦点眼内レンズを比較したところ、EDOF眼内レンズでは、遠方視力を維持しながら中間・近方視力やメガネからの独立性が高くなる傾向が報告されています。
ただし、光のにじみやハローなどの光視症はレンズ設計によって差があり、特に回折型では単焦点レンズより多くなる可能性があります。
「強化型単焦点」と「EDOF」の境界も変わってきています
近年では、通常の単焦点眼内レンズよりも中間距離の見え方を改善した強化型単焦点眼内レンズも普及しています。
2026年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、強化型単焦点眼内レンズとEDOF眼内レンズについて、遠方・中間・近方視力だけでなく、ハローやグレアなども含めて比較されています。
研究結果からは、両者とも良好な遠方視力を得られる一方、一般的にはEDOFの方が中間から近方にかけて広い視力範囲を得やすいことが示されています。
つまり、「単焦点か多焦点か」の2択ではなく、その中間に複数の選択肢が存在するのが現在の白内障手術です。
新世代EDOF眼内レンズの研究も進んでいます
2025年には、PureSee EDOF眼内レンズとEyhance強化型単焦点眼内レンズを比較した研究も報告されています。
100眼を対象とした研究では、EDOF群の方が中間視力および近方視力で良好な結果を示し、遠方視力は同程度でした。近方でメガネを必要とした割合についても、EDOF群では36%、強化型単焦点群では80%と報告されています。
一方、EDOF群では光のにじみなどの自覚症状がやや多くみられました。この研究からも、眼内レンズ選択では単純に「どちらが優れている」ということではなく、見える距離を広げたいのか、夜間の見え方を重視するのかといった患者さんごとの優先順位が重要であることが分かります。
左右の眼に異なる眼内レンズを入れる方法も
近年注目されている方法の一つに、左右の眼で異なる特徴を持つ眼内レンズを使用するMix & Match(ミックス&マッチ)があります。
2026年には、日本からも、片眼に3焦点眼内レンズ、反対眼に非回折型EDOF眼内レンズを使用した研究が報告されています。Clareon PanOptixとClareon Vivityを左右に組み合わせた27人54眼を対象として、術後の遠方・中間・近方視力などが評価されています。
片眼で近方視力を補い、もう片眼で中間距離や光学的な特性を補うという考え方で、今後さらに研究が進む分野と考えられます。ただし、すべての患者さんに適しているわけではないため、眼の状態や生活スタイルを考えて慎重に判断する必要があります。
AIも白内障手術に利用され始めています
白内障手術では、手術前に眼軸長や角膜の形などを測定して、眼内レンズの度数を決定します。この計算精度は術後の見え方に大きく影響します。
近年ではAIを利用した眼内レンズ計算式が開発されているだけでなく、2025年には、大規模言語モデルを利用して眼内レンズ度数計算の検査結果を処理し、眼内レンズ選択を補助する試みも報告されました。
現時点では医師による確認や判断が不可欠ですが、今後、AIが術前検査やレンズ選択を補助する場面はさらに増えていく可能性があります。
「一番良い眼内レンズ」は一つではありません
白内障手術を検討すると、「一番新しいレンズが一番良いですか?」「一番高いレンズが一番よく見えますか?」と聞かれることがあります。
しかし、眼内レンズにはそれぞれ特徴があります。遠くをできるだけクリアに見ることを重視する方もいれば、スマートフォンや読書をできるだけメガネなしで行いたい方もいます。
車の運転、夜間運転、パソコン作業、読書、スマートフォンの使用頻度、メガネをどの程度減らしたいかなどによって適したレンズは変わります。
さらに、角膜や網膜、視神経などの状態によっては、多焦点眼内レンズが適さないこともあります。そのため白内障手術では、「その方の眼に適しているか」と「術後どのような生活を希望されるか」の両方を考えて眼内レンズを決めることが大切です。
まとめ
2025〜2026年に発表された研究を見ると、白内障手術はさらに進歩しています。特に、強化型単焦点眼内レンズ、EDOF眼内レンズ、多焦点・3焦点眼内レンズなど、眼内レンズの選択肢が増えています。
白内障手術は「白内障を治療する手術」から、「術後の見え方を設計する手術」へと変化してきています。
ただし、それぞれの眼内レンズにはメリットとデメリットがあります。最新の眼内レンズがすべての方に適しているわけではありません。眼の状態、年齢、職業、運転の頻度、読書やスマートフォンの使用状況などを確認したうえで、ご自身の生活に合った眼内レンズを選択することが重要です。
参考文献(PubMed)
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