
眼底写真やOCTを見るだけで、遺伝性網膜疾患の原因となる遺伝子をAIが予測する。
そんな新しい眼科診療につながる研究が、2026年7月、医学誌「Nature Medicine」に発表されました。
遺伝性網膜疾患とは?
遺伝性網膜疾患は、遺伝子の変化によって網膜の機能が徐々に低下する病気の総称です。
網膜色素変性症やスターガルト病など、さまざまな病気が含まれます。
同じような眼底所見を示していても原因となる遺伝子が異なることがあり、正確な診断には眼底検査やOCT、家族歴の確認、さらに遺伝子検査などが必要になることがあります。
眼底写真とOCTからAIが原因遺伝子を予測
今回研究されたのが、「Retina4IRD」というAI診断支援システムです。
Retina4IRDは、
- ・眼底写真
- ・OCT
- ・患者さんの臨床情報
などを組み合わせて解析し、遺伝性網膜疾患の原因となる可能性が高い遺伝子カテゴリーを予測します。
中国・韓国・ポーランドの遺伝子診断が確定した1,843人、3,376眼のデータを用いて開発・検証されました。
AIを使うと診断精度が向上
さらに研究では、遺伝性網膜疾患が疑われる300人を対象として、
「眼科専門医のみ」
と
「眼科専門医+AI」
を比較するランダム化試験が行われました。
最終解析では、原因遺伝子を上位5候補までに含められた割合は、
眼科専門医のみ:67.3%
眼科専門医+AI:88.5%
となり、AIを利用したグループで有意に高い結果となりました。
さらに、AIを利用した医師では、その後の検査や診療方針に関する判断も改善したことが報告されています。
AIだけで診断できるわけではありません
重要なのは、今回のAIが遺伝子検査の代わりになるものではないという点です。
AIが眼底写真やOCTから原因遺伝子の候補を絞り込み、その後に必要な遺伝子検査などへつなげる「医師の診断をサポートする技術」として開発されています。
つまり、
眼底検査・OCT
↓
AIが原因遺伝子を予測
↓
必要な遺伝子検査
↓
より正確な診断
という流れです。
遺伝性網膜疾患の診療は大きく変わる可能性があります
近年、遺伝性網膜疾患では遺伝子治療やゲノム編集などの研究も進んでいます。
そのため、「どの遺伝子が原因なのか」を早い段階で絞り込むことは、今後さらに重要になると考えられます。
今回の研究は、AIが眼科医に代わって診断するというものではありません。
眼科医とAIを組み合わせることで、複雑な遺伝性網膜疾患をより効率的・正確に診断できる可能性がある
ことを示した研究です。
AI、遺伝子診断、そして遺伝子治療。
これらが組み合わさることで、将来の網膜疾患の診療は大きく変わっていくかもしれません。
【参考論文】
Jia H, Qian B, et al. AI-based clinician decision support system for diagnosis of inherited retinal diseases: a multicenter, randomized trial. Nature Medicine. Published July 24, 2026.
