白内障はカメラのレンズに相当する水晶体がにごる(混濁する)病気です。
加齢が原因であることが大半です。
従って老化を促進するような因子(例えば動脈硬化、喫煙、ビタミン不足、紫外線など)が白内障を進行させます。
白内障になると水晶体のクリスタリンというタンパクが変性し光の通りが悪くなり、一方で光は散乱するといった症状が見受けられます。
その結果コントラスト感度に特に影響が現れ
暗くなると見えが悪くなり、逆に明るいところではまぶしくなります。
白内障の進行を抑制する薬物も試みられておりますが、今のところ決定的な治療とはなっておりません。
現在用いられている白内障の治療は、混濁した水晶体の中身を超音波で粉砕吸引し(図1)、残されたカプセルの中に人工水晶体を入れる超音波吸引手術です。(図2)
3mmほどの切開からすべての処置が可能で、それほどの疼痛はなく、多くは外来手術ができます。
近年では、さらに進化した手術としてフェムトセカンドレーザーを用いたレーザー白内障手術が開発されました。
この手術では、より正確に、より安全に手術が行われます。
唯一の問題として、今のところ保険適応となりません。
入れる人工水晶体にはUVカットされたレンズ、球面収差を抑えたレンズなど、さまざまな種類があり、最近では多焦点レンズも発明されております。
今のところ多焦点レンズは保健扱いができないで、自費扱いの手術となるため高額の治療費が必要となります。
通常の眼内レンズでは調節作用がないため、遠見に合わせた場合は近見用の、近見に合わせた場合は遠見用の眼鏡が必要です。
比較的安全な手術ではあるが、どうしても避けることのできないまれな合併症として感染症、網膜剥離などの可能性があり、その結果視力低下を起こすこともあります。
以前に治療で来院された患者さんから次のようなご質問を受けました。
「虹彩が薄い色だと白内障や視力低下するというのは本当でしょうか?」
※虹彩(こうさい)とは・・・
角膜の後側にあり、外界から眼球内部へ入射される光の量を調整する機能をもつ部分です。
カメラの「絞り」に相当します。
結論から申し上げますと、虹彩の色と白内障の発生や視力低下は関係ないと言ってよいでしょう。
虹彩の電子顕微鏡写真虹彩の色を決定しているものは、虹彩のメラニン色素の量と実質を形成する結合組織の密度です。
虹彩を動かす筋肉は瞳孔括約筋と瞳孔散大筋とがあり、それぞれ支配神経が異なっています。
虹彩はこれらの筋肉により動いていますが、大変速いスピードでかつ頻回に動いています。その動きは体のどこよりも素早いのです。
この動きを可能にするために、虹彩の実質はかなり粗な組織となっています。
(丁度スポンジのような感じです)
実質を構成するものはファイブロブラスト(線維芽細胞)とそれが作り出したコラーゲン線維で、そこに色素上皮が作り出したメラニン色素が入り込んでいます。
図は虹彩実質のコラゲン繊維の電子顕微鏡写真です。
細いコラーゲン線維がまばらに存在していると、入射した光はレイリー散乱を起こします。
レイリー散乱は波長の4乗に反比例するため、短波長の光(青系統)は強く散乱し、入射した方向に多く返っていきます。
こうして虹彩が青く見えることになります。(空が青く見えるのと同じ原理です)
メラニン色素量と虹彩の色調虹彩に含まれるメラニン色素量によって虹彩の色調は変わります。
その様子は図のようになります。
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例えば、結合織が粗でメラニンが多いと緑の瞳になります。
虹彩の異色症の発現様式虹彩の色は遺伝することが調べで分かっています。
図は虹彩の色素が低下する疾患(虹彩異色症)を生じた家系の発現様式を調べたものです。
さて、虹彩の色を決定するものは虹彩実質の結合織密度と色素量ですが、虹彩上皮細胞は虹彩の色調に関係なくメラニンを含んでおります。(メラニンを多く含んでいるのは前部上皮細胞)
これにより瞳孔を経ない光が網膜に当たることは防がれています。
従って、虹彩の色と白内障の発生や視力低下は関係ないと言ってよいという事です。
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