◇急性帯状潜在性網膜外層症
角膜から網膜・視神経更に大脳視覚中枢に至る、あらゆるレベルの障害で視力低下を起こす可能性があります。病変部位の最も簡単な見分け方は明るさの感じ方で、明かりが全体に強く感ずるようなら角膜障害、弱く感ずるようなら視神経障害、部分的に暗く感ずる時は網膜障害の可能性が高いです。特に視神経障害では色覚に影響が強く現れ、赤系統の感度が悪くなるので、赤色を左右眼で比較すると症状が分かります。障害側では赤色が黒っぽく見えます。
全体が霞がかかったように見える場合は、角膜や水晶体などの中間透光体の障害の可能性が高いです。異物感を伴うようなら角膜障害、眼痛を伴えば虹彩炎や緑内障の発作が考えられます。中間透光体の異常は通常の眼科検査で発見できます。
簡単に原因が分からない場合は原因追及のためには眼底検査、視野測定、蛍光眼底撮影、OCT検査などの精密検査が必要で、これらの検査で大抵の網膜疾患、視神経疾患などは発見できます。これらの検査にても原因が判明しないことがあり、VERIS、VEPなどの高度の生理学的検査にて初めて異常が検出できることがあります。潜伏錐体ジストロフィーやAZOORなどの疾患はその代表例です。
◇AZOORについて
AZOORは1993年 J Mcdonald M Gass が報告した、急性に視野などの視機能障害を生ずる原因不明の疾患で、網膜外層視細胞レベルに障害が認められます。若い女性に好発し、初期に光視症を伴うことが多く、眼底に視野障害を説明できるような異常が見られず、通常の蛍光眼底造影やMRIなどの検査にても正常所見です。視力は1.0?手動弁までさまざまです。(平均0.5)
球後視神経炎や心因性視力障害などと誤診されることも多く、誤った治療を受けることが非常に多くあります。
回復例は報告により20?50%です。
最終視力は1.0以上が40%、0.1?0.9が35%、0.1以下が25%と報告されています。このように予後は必ずしも良好ではなく、視力0.1以下に固定することも少なくありません。まだ専門家にも知識の浸透が不十分な疾患ではありますが、症例は決して少なくありません。現在その原因については多くの仮説があり、さらに研究が進んでいます。
有効な治療は今のところ無いのが現状です。ステロイド、免疫抑制剤、抗真菌剤が効いたとの報告もありますが、ほとんどの症例で効果がありません。
その診断として多局所網膜電図で視野障害に一致した網膜反応の低下がみられること、OCTでIS/OSラインが消失していることが大切です。さらに原因追及のためにフルオレセイン蛍光眼底造影、インドシアニングリーン蛍光眼底造影の同時記録が有用と考えられます。